【令和8年 幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)】これからの園に求められる「遊びの深まり」と探究型保育の実践
文部科学省とこども家庭庁から、「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」が公表されました。
この案は制度の変更ではなく、「子どもの学びをどう捉え、先生方がどう支えるか」という原点の再確認と、それを具体的な形へ整理(構造化)したものです。
本記事では、この取りまとめ案の重要ポイントをわかりやすく解説し、今後の環境づくりや保育にどう活かすべきかを考察します。
令和8年「取りまとめ案」の背景と課題
平成29年の改定以降、すべての施設で整合性のある幼児教育が進められてきました。しかしその一方で、現場の実践においてはいくつかの課題も浮き彫りになっています。
- 「10の姿」の独り歩き
「10の姿」が5歳児後半の評価ツールとしてのみ意識されがちで、日々の遊びや3〜4歳児からの成長のつながりが見えにくくなっています。 - 指導の意図づけの難しさ
育みたい資質・能力と環境の関係性が複雑なため、先生方が指導を振り返りにくいという声があります。 - 小学校接続の形式化
行事などの交流にとどまり、園での学びが小学校へどうつながるかという「本質的な学びの接続」に課題が残っています。
これらの課題を解決し、子どもたちの自発的な活動をより豊かにするために、本案の中心に据えられたのが「遊びの深まり」という考え方です。
「遊びの深まり」とは
今回の取りまとめ案で、最重要コンセプトとして掲げられたのが「遊びの深まり」です。子どもが自発的に楽しむ「遊び」のプロセスそのものが、資質・能力の育成に深く結びつくため、幼児教育の質を高める上で欠かせない要素と位置づけられました。
ここでいう「遊びの深まり」とは、子どもの体験プロセス全体を指します。
まず子どもが「面白そう!」と心を動かし(心情)、「やってみよう!」と試行錯誤を重ね(意欲・態度)、多様なモノや周囲の人と直接関わっていきます。この過程を通して、「知識・技能の基礎」や「思考力の基礎」はもちろん、「学びに向かう力・人間性等」が総合的・一体的に育まれていきます。

出典:文部科学省・こども家庭庁「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」
3つの柱、5領域、3つの視点、10の姿の構造化
新しい指針案では、「3つの柱」「5領域」「10の姿」などの関係性が明確に整理・構造化されました。
これにより、日々の遊びの中で「どのような学びが育っているか」を見取りやすくなり、指導計画の振り返りへスムーズにつなげられるよう改善されています。

出典:文部科学省・こども家庭庁「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」
0歳からの発達のつながり
あわせて、0歳から小学校接続に至るまでの子どもの発達の連続性についても、より分かりやすく整理されました。
0歳からの学びのつながり
- 言葉を用いて考える力の基礎
0〜2歳での言葉掛けを受け止め、3〜5歳での「考えを深める言葉を使う体験」へ繋げます。 - 他者と関わり協同する力
身近な人との信頼関係を土台に、友達と共通の目的に向かって工夫し合える力を育みます。 - 多様な動きの体験と身体感覚
大人の指示に従うだけでなく、遊びの中で全身を使って体を動かす体験を充実させます。

出典:文部科学省・こども家庭庁「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」
小学校との「架け橋期」における園の役割
- 共通の教育的視点を持った接続
5歳児から小学1年生までの2年間を「架け橋期」と捉え、小学校と共通の教育的視点を持って学びのつながりを意識した実践を行います。 - 「対話のための資料」の活用と可視化
園で育まれた資質・能力を小学校へ具体的に伝えるため、子どもの姿を可視化した「対話のための資料」を作成・共有してスムーズな接続を目指します。

出典:文部科学省・こども家庭庁「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」
指導と評価の改善
今回の案では、すべての施設で「乳幼児理解に基づく評価」を行い、指導の実践を改善していく方針が示されました。
ここでの評価とは、子どもをテストのように測ることではありません。「子どもが今どんなことに興味をもち、何を学んでいるか」を見取り、その姿をもとに日々の保育計画や環境を再構成していく取り組みを指します。
「記録と振り返り」を園の文化にするために
「振り返り」を単なる業務で終わらせず、保育を豊かにする園の文化として根付かせるには、以下の3つの視点が重要です。
- 活動記録から「姿の見取り」へ(ドキュメンテーションの活用)
「〇〇をした」という事実だけでなく、子どもの姿や心の動きを写真付き記録(ドキュメンテーション)として可視化し、振り返りや保護者共有に役立てます。 - 先生同士の対話(園内研修)の充実
記録を持ち寄って話し合うことで先生方の「見取る目」が養われ、翌日からの実践がより深まります。 - 負担のない「語り合い」の仕組みづくり
立ち話やICT・付箋を使い、先生方が負担なく楽しく子どもの姿を語り合える温かい風土をつくることが不可欠です。

出典:文部科学省・こども家庭庁「幼児教育WG・保育専門委員会 取りまとめ(案)」
特別な配慮を必要とする乳幼児への支援
多様な子どもたちが共に育ち合う「インクルーシブな保育」の推進も重要なテーマです。一人ひとりの特性に寄り添い、みんなが等しく「遊びの深まり」を経験できるよう、次の方向性が示されています。
- 障害のある乳幼児への支援(合理的配慮と環境整備)
「合理的配慮」の土台となる「基礎的環境整備」を整え、個別の指導・支援計画を通して小学校へ確実につなぎます。 - 外国人乳幼児等への支援(日本語の力を育む視点)
日常的な関わりの中で“日本語の力を育む視点”を持ち、個々の実態に応じた指導の工夫を行います。
ICTの活用と留意点
園での活用が進むICTについても、その役割と医学的知見に基づいた留意点が整理されました。
- 体験を充実させる道具として活用
乳幼児期は五感を通した直接体験が不可欠です。ICTは「直接体験の充実を図るための道具」として活用します。 - 科学的・医学的知見を踏まえた配慮
スクリーンタイムの影響に配慮し、医学的知見に基づいた適切な利用時間や使い方を徹底します。 - 障害のある乳幼児への効果的なツール
ICTは障害のある乳幼児の学びを支える強力なツールになります。適切な管理の下で活用しましょう。
まとめ
「遊びの深まり」を大切にする保育は、子どもたちの主体性を育むと同時に、先生方が保育の面白さを再発見するきっかけにもなります。
「すてむくらぶ」が目指すのも、子ども自身の「なぜ?」から始まる探究的な学びです。新しい要領・指針に向けて、自園ならではの豊かな保育を共に育んでいきましょう。

